【まずはAIを知りたい方向け】医療AI概論の基礎編を解説します!
- まずはAIについて知りたい
- 医療におけるAIの関わりを知りたい
- プログラミングは置いておいて、AIの概要は知りたい
ここ数年で、一気に医療においてもAI(人工知能)が注目されてきています。
しかし、AIを学ぼうと思っても「結局難しくて分からない、何を見ていいか分からない」と最初の一歩で挫折してしまうケースは非常に多いです。
私は、これまでセミナーや書籍など多くの医療×AIについて勉強をしてきましたが、ハードルの高さも感じました。
少しでも多くの人にAIについて知るきっかけにして欲しい
そこでこの記事では、【まずはAIを知りたい方向け】に医療AI概論の基礎編をまとめて解説します。
この記事を読めば「医療AIの基礎的な概論から医療AIの全体像」が全て分かります。
医療におけるAI概論
まずは、『医療におけるAI概論の基礎編』という事で、日本の医療の現状や医療従事者がAIを学ぶ事の意義、そして今後社会の中で、AIがどのような影響を与え、どのように関わっていくのかを説明していきます。
日本の医療における危機
日本の医療における危機という事で、まずは今の日本の医療について考えていきたいと思います。
ここで1番に伝えたい事は、医療崩壊への危機感です!
日本には国民が医療サービスを公平かつ安価に利用できる国民皆保険制度というものがあります。
しかし、厳しい国の財政の中で医療は多額のお金を消費し、このままでは医療は崩壊すると考えられます。
そこで、重要なのは個人個人が医療崩壊の危機感を持ち、独自に自立するための方法を見つけていく事が重要です。
それには、AI、ICT、メタバースなど新しい分野と医療を掛け合わせて新しいものを作り上げる必要があります。
決して作る側だけではなく、使う側もそうした知識・視点を持つことが非常に重要です。
このサイトを通して、少しでも学んでみてください。
医療従事者がAIを学ぶ意義
これから医療従事者がAIを学ぶ意義について説明したいと思います。
日々の膨大なタスクが軽減され、より良い働き方が出来る! ひっ迫した医療体制を変えていける! 病院にとって貴重な存在として、自分の希少価値を上げることが出来る!
簡単にまとめると上記の3つのポイントになります。これから詳しく説明していきます。
『医療従事者がAIを学ぶ意義』は、医療×AIによって現在のひっ迫した医療体制を変えていく事にあります。
日本の医療従事者は、海外と比べても優秀であると言われています。
しかし、日々の業務に追われ時間的余裕や精神的余裕がなく、AI、ICT、メタバースなど新しい分野に対する知識が非常に少なく、海外からこうした部分で大きく遅れています。
医療における多くの課題をAIを使って解決していく事で、日々の膨大な量のタスクを軽減し、今よりより良い働き方、そして結果としてより良い患者への治療・検査の提供に繋がります。
待っていてもなかなか今の環境は変わりません。
だからこそ、医療従事者自身が、実際に課題を持っている人たちだからこそAIを学び、知っておく事で変えていけると思います。
例えば、医療においてシステムの導入や新しい機器の導入には数百万~数億円と多額のコストがかかります。
今後、AIの発展と共に多くの製品が導入されるとき、AIの知識を持っていれば、その製品が本当に自分の病院にとって必要なものなのか?どの製品を導入するべきなのか判断する事が出来る様になります。
あなたがいる事によって、病院にとって、無駄な数百万以上の出費をする事なく本当に必要なものを選べる事は大きなメリットです。
現状、医療×AIの知識を持った人は残念ながらとても少ないです。
だからこそ、今ブルーオーシャンな医療×AIを学ぶ事はとてもチャンスです。
人とAIとの関わり方・向き合い方
これから、人とAIとのかかわり方・向き合い方について説明していきたいと思います。
AIに全て頼るわけではない! AIというスーパーパワーを手に入れて、それを使う!
簡単にまとめると上記2つになります!
AIは、単純な作業であれば膨大な量のタスクを高速でこなすことができます。
人間では、決して勝つことは出来ません。
このように、AIに仕事が取って代わるのではなく、AIというスーパーパワーを使って、これまでは膨大な仕事量によって出来ていなかった本来人間がするべき仕事に時間を割くことが出来るのです。
このように、AIに仕事が奪われると考えるのではなく、上手くAIと向き合い、関わっていく事が重要です。
AIって何?
これからAIって何?という事で、簡単にAIが一体何なのか説明していきたいと思います。
AIという言葉自体は聞いたことがあって、人工知能だという事は知っている方も多いと思います。
しかし、実際にはよく分からないという人も多いと思います。
簡単に分かりやすく、AIについて理解できるように説明していきます。
AIとは?AIの定義
AIとは?AIの定義は?という事について考えてみようと思います。
AIとは、一般的に大量の知識データに対して、 高度な推論を的確に行うことを目指したもの(一般社団法人 人工知能学会設立趣意書からの抜粋)というように説明されます。
しかし、実はAIには明確な定義はありません。
上の図を目にした事がある方も多いのではないでしょうか?
AIの位置付けについてですが、一番広く、大きな枠組みが人工知能いわゆる「AI」になります。
実は、よく聞くAIとはとても広い意味です。
その中に、機械学習や深層学習(ディープラーニング)と言ったものが含まれているという位置付けになります。
まずは、難しい中身は置いといてAIの中に機械学習やディープラーニングがあるんだなというくらいで覚えておいてください。
AIに仕事は奪われるのか?
続いては、AIに仕事は奪われるのか?という事について話をしていきたいと思います。
AIという言葉を聞くと、仕事を奪われてしまうのではないかという事に不安を感じる方も少なくないのではないでしょうか。
結論から言うと、AIによって仕事は以下の3つに分類されるでしょう。
なくなる仕事 なくなりにくい仕事 → 本来人間がするべき仕事 新しく生まれる仕事
AIに人間は勝てないのか?
確かに、勝てない部分もあるのは事実です。下記に記す能力は人間がAIに絶対かなわない能力と言われています。
無制限の集中力と持続力 超高速の論理的思考力 膨大な記憶力と検索力 直観的判断力 コスト
しかし、なくなりにくい仕事を考えていくと、本来人間がするべき仕事が残っていくと思いませんか?
まさに、その仕事こそがこれからなくならない仕事だと言えるでしょう。
機械学習概論
先程、AIという大きな枠組みの中に機械学習があるという事を説明しました。
AIには明確な定義はないものの、機械学習は説明が可能なものとなっています。
これから機械学習の概論について、説明していきたいと思います。
機械学習とは、簡単に言うなら…
ある入力に対し、期待する出力を返してくれるような関数のパラメータを求めることだと言えます。
さらに詳しく説明すると、大量のデータからデータに潜むルールやパターンをプログラム自身が学習して発見し、そのルールやパターンを予測することであると言えます。
例として、犬と猫の画像を分類することを考えてみたいと思います。
上の図のように、犬・猫の画像を入力した時に、正しくイヌ・ネコという出力を返してくれるような関数を求めることであると言えます。
つまり!
機械学習を一言で説明するなら
データから自動で答えを導き出してくれるような関数を作らせること
まずは、簡単に機械学習は答えを求めるようなルールを自動で求める事だと思ってください!
AIの課題
ここからは、AIの課題について説明していきます。
医療×AIは重要であると伝えてきましたが、やはり多くの課題もあります。
どんな課題があるのか、そしてそれをどのように解決していくのかを今後考えていく事が重要になります。
従来のルールベースの問題
AIが登場する以前に、医療ではCADという自動診断支援システムというものが登場しました。
こうした従来の方法というのは、人間の手でそのものの特徴にルールを付けて判断するというルールベースに基づくシステムでした。
先程の様に、犬猫の判定を例に用いて説明すると、
耳が2つある 尻尾がある 目が2つある 4足歩行である
犬と猫について上記のような特徴を人間が見て、犬や猫のルールとして定義します。
このような画像を判断しようとした時、画像①の場合はおそらく猫だと判断してくれます。
しかし、画像②の場合は人間目から見れば猫だと分かりますが、先程のようなシステムでは猫であると判断できない可能性が高いです。
このように、少し違うパターンになるだけで判断できなくなり実際には使えないという問題があり、なかなか普及しませんでした。
AIの仕組み
こうしたルールベースの問題を解決するために、登場したものがAIになります。
AIでは、人間の脳を模倣したニューラルネットワークを利用して、AI自身が犬や猫のルールを学習していくという仕組みになっています。
よって、従来の問題を大きく解決する可能性が示され、現在多くの研究が行われAIを用いたシステムが臨床に登場しています。
しかし、AIも完璧というわけではありません。
次からは、医療におけるAIの課題について説明していきます。
医療におけるAIの課題
結論に至るプロセスが不明(ブラックボックス問題) 医療のデータは非常に少ない 個人情報の取り扱いが難しい 標準的なモデルがない AIの技術者が少ない 医療従事者のAIに対する理解が少ない 新しい技術の発展が早く知識のアップデートが必要
主に、これらの問題があります。
AIは、自動でルールを見つけて判断してくれるという特徴がある一方で、答えに辿り着いた過程が分からないという問題が大きな問題とされており、これをブラックボックス問題といいます。
また、医療特有の問題点として個人情報であるため多くのデータを集める事が難しいという問題があります。
一般的に、AIはデータの数が多いほど精度が高くなるため、AIの発展という点では大きな課題となっています。
その他、医療従事者でAIの知識も持っている医療×AIの人材が不足しているというのも問題となています。
しかし、これはある意味ブルーオーシャンという事であり、チャンスだと言えます。
AI診断における責任
続いて、AIによる診断は非常に便利である一方で、精度が100%という事はありません。
これは人間においても言える事ですが、AIが判断するようになった場合、責任はどうなるのかという問題も出てきます。
現状では、AIの使い方としては、医者の診断の補助として使うのが良いとされています。
つまり、最終的な判断は医者がするという事で責任は医者が持つべきだという流れになっています。
医者は、タスクシフトが国としても進められるほど膨大な仕事に追われています。
そこで、医者の仕事を大幅に軽減するという目的で医療におけるAIの活躍は非常に期待されています。
今後、AIの使い方は議論がされていくと思いますが、当分は補助として使うという考えになるのではないかと思います。
医療におけるAI活用
ここからは、医療におけるAIの活用について見ていきたいと思います。
AIが医療の中でどのように使われているのか、具体例を用いてみていきます。
匠の技をAIに活用する
医療では、診断する際の判断や手術の技術など医者固有のスキルに依存するところが大きいです。
難しい症例になればなるほど誰でも勉強すれば出来るようになるという事ではなく、匠の技になります。
こうした匠の技というのは、その先生がいなくなると技術が失われてしまいます。
また、地方やその先生がいない病院では出来ないという問題もあります。
そこで、AIがこうした匠の技を学習する事で、技術を日本全国、世界に広げることが可能になります。
AIを用いた皮膚癌の分類
▼ AIを用いた皮膚癌の分類の論文はこちら
この論文では、大規模なデータセットおよびCNNを活用し、皮膚がんを自動分類する深層学習モデルを提案し、その結果、提案モデルでは、皮膚科医と同等、それ以上の分類性能を達成したことを報告しています。
詳しい論文の解説は、こちらの記事で解説されているので参考にしてみてください。
胃の内視鏡でリアルタイムに胃癌を見つける
胃の内視鏡検査でリアルタイムに胃癌を見つけてくれるというAIも登場しています。
詳しくはこちらの記事に画像なども見れるようになっているので、参考に見てみてください!
こちらも、医師の負担を軽減する非常に有用なシステムであると思います。
しかし、リアルタイムに癌の位置を示すので医師が先にAIの判断を見てしまうという点からAIの診断にあたるのではないかという問題もあります。
眼科領域におけるAI活用
眼科領域におけるAIとして、米国食品医薬品局(FDA)は2018年4月11日、医師不要で診断可能、AI医療装置に初の認可を行いました!
この装置は、中度よりも重い糖尿病網膜症を検出するように作られているAIになります。
海外では、もうすでに2018年にはこうしたAIが誕生しました。
詳しい内容はこちらの記事で紹介されています。
乳癌におけるAI
医療におけるAIの研究では、乳癌における研究は盛んに行われています。
デジタル病理支援ソリューション「PidPort」を提供するメドメイン株式会社は、Deep Learning(深層学習)を用いることで、乳腺の病理組織デジタル標本において、非浸潤性乳管癌を浸潤性乳管癌と識別する人工知能の開発に成功しました。
詳しい内容はこちらの記事に載っているので、参考にしてみてください。
▼ 医療AIが画像診断に利用されている実例をまとめた記事はこちら
ディープラーニングの基本
これまで、AIについて、医療におけるAIの課題について、そして医療におけるAIの実例について紹介してきました。
何となくAIについての概要は掴めてきたのではないでしょうか?
最後に、AIのなかで注目されているディープラーニングという技術について簡単に紹介したいと思います。
ディープラーニングとは
まずは、そもそもディープラーニングとは?という話をしていきたいと思います。
改めて位置付けの図を見ていくと、ディープラーニングは深層学習(DeepLearning)と言われ、AIの中の機械学習の中の1つになります。
ここで機械学習について少し復習をしてみると
機械学習とは、簡単に言うなら…
ある入力に対し、期待する出力を返してくれるような関数のパラメータを求めることでした。
ディープラーニングも基本的な考えは同じです。
ディープラーニングとは、多数の層からなるニューラルネットワークを用いて学習する事により、ある入力に対し、期待する出力を返してくれるような関数のパラメータを求めることです。
つまり、この関数と呼ばれる部分にニューラルネットワークが用いられているという事になります。
どうやって学習するか
それでは、どのようにして学習していくのか?という所ですが
今回も、犬猫を例に説明したいと思います。
順伝播計算 誤差の計算 重みの更新 ①~③を繰り返す
主にこのような流れで学習を行っていきます。
①の順伝播計算では、データの入力を行う手順になります。犬猫の画像を流して入力から出力まで順番に計算をします。
②の誤差の計算では、①によって出た答えと本当の答えとの誤差を計算します。
例えば、猫の画像を入力して本当の答えは1だとして、計算した答えが0.3だった場合、誤差は0.7となります。
しかし、理想は1と計算結果で出て欲しいので、この誤差が小さくなるようにしたいという事になります。
③の重みの更新では、入力から出力まで計算していく中でこの誤差が最も小さくなるように重みというものを更新していきます。
重みはたくさんあり、誤差が小さくなるような重みの組合せを探していきます。
これがディープラーニングの学習のおおまかな流れになります!
ディープラーニングの問題
ディープラーニングのおおまかな流れについては理解できたでしょうか。
次は、ディープラニングにおける問題について説明していきます。
データの偏り 勾配消失問題 過学習 ブラックボックス問題
ディープラーニングを行う上で、これらの問題が生じます。
それぞれについて詳しく説明すると難しいと思いますので、ざっくりと説明します。
ブラックボックス問題は、上の方でも説明しましたが、学習する過程が見えないという問題です。
データの偏り、過学習、勾配消失問題はどれも学習が上手くいかないという事に繋がる問題です。
データを用いて学習を行って精度が良かったとしても、例えば新しい未知のデータを予測する時に全く予測できなければ使い物になりません。
こうした問題が、しばしば起きてしまうというのがディープラーニングにおける大きな問題であると言えます。
まとめ
今回の記事では、【まずはAIを知りたい方向け】医療AI概論の基礎編を解説しました。
まずは、プログラミングとかをやるよりAIについて概論的に広く全体像を掴みたいという方のために書きました。
分かりやすく説明しているので、書籍を使って勉強する前の『AIを勉強したいならまずはここ』と思っていただけると嬉しいです。
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